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菊地成孔 日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』の意義を語る

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菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』第9次韓流最高会議で日韓のラッパーの共作曲、Keith Ape『잊지마 (It G Ma) ft. JayAllday, loota, Okasian, Kohh』を紹介。その意義や素晴らしさについてブロガーのヴィヴィアンさんらと話していました。


(EXO『Thunder』ライブバージョンを聞く)

(菊地成孔)はい。えー、とにかくまずは、プレイすると・・・



(菊地成孔)(ライブの歓声が流れる)・・・この、なんて言うんですかね?スタジアムクラスの黄色いスクリーミングっていうんですかね?これに、(韓東賢)書記長も参加してるんですね?これね。

(韓東賢)これは・・・

(菊地成孔)キャーッ!言ってるんですか?

(韓東賢)キャーッ!は言ってます。

(菊地成孔)キャーッ!言ってるんですか?これはK-POPに限らず、アイドル産業全体に言える、あまりに話が大きくなっちゃいますけど。最初はね、私、48グループのみなさんの大変立派なお仕事ぶりに、ちょっと批判的なところがあって。それはどうしてか?というと、別に嫌いとかじゃないんですけど。『音楽』っていう要素をやっぱり抜いていると思ったんですよ。

(韓東賢)はいはいはい。

(菊地成孔)で、それは欠乏と思ったら大変な欠乏で。だって、音楽買うんだから。なのに、音楽的な情報っていう要素が抜けていると思ったら、これはなんて言うんですかね?バッタもんっていうか。お弁当開けたら空だったみたいなね、気になっちゃうんですけど、それは大変な誤解で。アイドルを追いかけていくという喜びの中に、ヘタすると音楽っていうものの情報が余分にあったら余計かな?っていう。そんなのいらないわ!っていう可能性もあって。日本ってすごい進んでたのかも?と、いまは思ってるんですよ。

(韓東賢)いや、わかります。

(菊地成孔)そうするとね、要するに、ただ単に軽く弁当が食いたかったのに、『おい、これ。これ、くっつけてやるよ!』っつって、フライドチキンとかさ(笑)。腹にもたれるもんがドーン!と乗っかってると、サクサク食べられないわけですよね。

(韓東賢)いや、ねえ。ポストモダンですよね(笑)。

(菊地成孔)本当のポストモダンですよ。アイドルっていうのは、まあ、私はいい意味で芸者に戻っていく、芸妓の文化に戻っていくっていうことだと思うんで。その文化自体は認めるんだけど。まあ、まさにそうで。もう歌自体は数え歌とか遊び歌でもよくなっちゃって。

(韓東賢)いや、だから韓国のアイドルはそれには至らない。それはできないですから。そこはできないんです。どうしても。できないっていうか、そうするつもりがないのかもしれない。

(菊地成孔)このね、中心の空虚な感じっていうのは日本にしかできない。

(韓東賢)歌も上手くなりたいし、いい音楽を聞かせたいし。アイドルっていうフォーマットが一見アイドルだけど、本人たちはやっぱりアイドルだけどもアーティストだし。いい歌を届けたい!歌いたい!踊りたい!っていう、すごくプロフェッショナル・・・

(菊地成孔)そのね、両立で。まあ、そのプロダクツっていうか。音楽の、製品という意味でのプロダクツっていうより音楽プロデュースという意味でのクオリティーがK-POPにはあったんで。それで、あったから、まあ、あるから素晴らしいというようなシンプルヘッドでですね、まあ聞いていたわけですけど。ですから一方、シンクタンクのヴィヴィアンさんがなさっていることは、まあ音楽をギリギリ隣接っていうか。K HIPHOPっていうものの位置自体がどういう位置で、で、K-POPの位置とどういう風に位置関係が転倒したのか?っていうのが。それはどういう感じなんですか?

(ヴィヴィアン)ええと、基本的にまずは韓国ではどうか?っていうと、K-POPアイドルファンとはぜんぜんかぶってなくて。で、HIPHOP自体がすごく人気があるジャンルなので、普通にHIPHOPファンの・・・

(菊地成孔)そこが日本といちばん違うんですね。

(ヴィヴィアン)ぜんぜん違う。

(韓東賢)日本の昔のバンドブームの時のロックみたいな感じだよね?

(ヴィヴィアン)そんな感じです。本当、そんな感じ。

(菊地成孔)なるほど。

(韓東賢)だからアイドルとコラボ、いろんなこと含めて、だからいまはベーバがメジャーになっているのとかも含めて、バンドブームの、日本だったらバンドをやるところが、いまの韓国だったらマイクを握るみたいな。そういう意味で、ね。

(ヴィヴィアン)そう。だから10代、20代の男の子たちも憧れて自分もラップを始めるし、あと、10代、20代の女の子たちがライブを見に行くっていう感じで。本当、昔のバンドブームに似ています。

(菊地成孔)うん、なるほど。

(ヴィヴィアン)で、そういう感じなんですけど。日本の場合は、もうそもそもHIPHOPがそんなに人気がないっていうのもあって。で、日本人でK HIPHOPを聞いている人たちはみんな最初韓流とかK-POPから入ってるんですよ。で、K-POP聞いているうちに、なんかちょっとしたきっかけで、たまにアイドルとラッパーのコラボがあるじゃないですか。そういうのがきっかけでK HIPHOPに流れてくる人が多いんですね。

(菊地成孔)なるほど。とは言いながら、やはりHIPHOPというカルチャーがもうキレキレのミクスチャーで、いつでもアートになるというところも死んでないわけで。まあ今日、絶対、ヴィヴィアンさんと事前に話して、今日絶対にプレイしなきゃいけないのはこれだなっていうのがね。

(ヴィヴィアン)絶対ですね。これは。

(菊地成孔)これ、イッチュですよね?イッチュ。ちょっと、解説をお願いします。

(ヴィヴィアン)はい。ええと、『It G Ma』っていう、『忘れるな』っていう意味の曲なんですけど。Keith Apeっていう、去年私が主催したハイ・ライトレコーズっていうレーベルのライブがあって。菊地さんも東賢さんも来ていただいたんですけど。そのハイ・ライトに最近所属した、いちばん若手のKeith Apeっていう男の子が・・・

(菊地成孔)Keith Apeの『エイプ』はちなみにもうはっきりとPVで、あのエイプ。日本のあのエイプのものを着て、そこに斜線を入れてるんですね(笑)。そこに目線を入れてますから。

(ヴィヴィアン)あと、なんかたしか『キース』はキース・ヘリングだったと思うんですよ。それでそのKeith Apeと、同じくハイ・ライトのOkasianっていう韓国系アメリカ人のラッパーと、あと、JayAlldayさんっていう日韓バイリンガルの、日本でも活動を以前していた、日本語と韓国語両方ラップする方と、あと、日本からlootaさんとKohhさん。この2人が参加して。

(菊地成孔)うん。lootaさんとKohhさん。これはもう・・・あっ、韓さん知るわけもない。いま、韓さんがもうボヤーっとしてますね(笑)。

(ヴィヴィアン)が、参加している曲で。日韓コラボなんですけど、これがまた今年2015年の元日にリリースされたんですよ。もう2015年明けて、いちばん最初にリリースされたのが、もうガッツリ日本語と韓国語半々ぐらいでミックスしてやっている曲で。これがまた、しかも曲のスタイルがいままで日本と韓国になかったような新しいHIPHOPで。

(菊地成孔)そうですね。

(ヴィヴィアン)アメリカには去年ぐらい、流行ってきたやつなんですけど。

(菊地成孔)まあ、洋楽ですね。完全な洋楽。

(ヴィヴィアン)そう。で、まだ日本人と韓国人のHIPHOPヘッズたちもぜんぜん聞いていなかったスタイルの曲なので、結構元日からすごい衝撃を与えて。で、日本人と韓国人両方のラッパーが参加してるんで。もう日本の普通のHIPHOPマニアの人たちも、韓国のHIPHOPファンの人たちも、もう同時に、『なんだ、これ!?』ってすっごい騒ぎになって。で、それぞれ、今回すごいよかったのは、日本のHIPHOPファンたちも今回これをきっかけに韓国のHIPHOPに興味を持って。

(菊地成孔)そうですね。

(ヴィヴィアン)で、韓国のHIPHOPファンたちも日本のHIPHOPに興味を持って。で、私、先月ちょっと韓国に行ってきたんですけど、韓国の人たち、すごい普通にKohhとか知ってるんですよ。

(菊地成孔)まあ、そうでしょうね。

(ヴィヴィアン)すごい有名で。なんか日本よりも有名なんじゃないか?って思うぐらい。最近なんか韓国でも・・・

(菊地成孔)(笑)。かもしんない。

(ヴィヴィアン)インタビューも受けてたんで。そうかもしれないですね。『JUNJI TAKADA』とかすっごいみんな知ってて。



(菊地成孔)はい。あの、あらゆる立場の人に聞いてほしいですね。この曲は。韓国カルチャーが大好き。だけど最近飽きてきたという方。で、韓国カルチャー相変わらず好きだという人。韓国カルチャー大嫌い。日本語ラップ大好き。韓国人ラッパー大嫌い。まあ、いろんな逆、その逆、などなどいっぱいあると思うんですけども。あらゆる日韓の立場を違えた人に聞いていただきたい一曲です。まあ、『イッチュ』でいいですよね?

(ヴィヴィアン)ですね。

(菊地成孔)『忘れるな』という。

(ヴィヴィアン)『It G Ma』です。



(菊地成孔)はい。Keith Apeその他・・・『その他』、言っちゃあいけませんけども。大変な音楽的な、15年以降のものと言ってもいいと思いますけども。ぜひ、動画も見ていただきたいですね。衝撃を受けていただきたい一曲でした。

(ヴィヴィアン)あの、私のブログにもこの曲と、あとこの曲があるアメリカの曲からインスピレーションを確実に受けているんですけど。その曲の解説とかも・・・

[関連リンク]Keith Ape – 新曲 『잊지마 (It G Ma)』 リリース/ヴィヴィアンの音楽ヲタブロ。

(菊地成孔)まあ、この曲は簡単に言うと、まあ、ネタばらしですけど、パクリですね。

(ヴィヴィアン)(笑)

(菊地成孔)なんですけど、それはまあ、敢えてやってるんです。

(ヴィヴィアン)そうなんです。で、もうそのパクリとかも置いておいても、アメリカとかでもすごい高評価で。これはすごいものを日本人と韓国人が作った!みたいな感じで。

(韓東賢)なぜ、接点っていうか、どういう?

(菊地成孔)まあ、それはCMの後に。

(CM明け)

(菊地成孔)はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週は日本映画大学准教授、社会学者の韓東賢さん。そしてブロガーのヴィヴィアンさんをお迎えいたしまして、K-POP、K HIPHOPについて徹底討論する韓流最高会議 第9次となります。これは、どういう経緯で出来上がったと?

(ヴィヴィアン)ええと、そのさっき話した日韓バイリンガルのJayAlldayっていうラッパーが、日本で数年前まで活動してたんですね。で、その時にlootaとかと親しくなって。で、一緒にいろいろ日本でライブやったりしてたみたいなんですけど。で、いま、JayAlldayは韓国に帰って、韓国で活動してるんですが。それで、なんか一緒にやろうっていう話を前からしてたみたいで。で、lootaがたぶんKohhを紹介して。で、JayAlldayはKeith ApeとOkasianと一緒にThe Cohortっていうクルーをやっているんで。

(菊地成孔)はい。

(ヴィヴィアン)それでもう、その仲いいのをそれぞれ紹介しあって集まって、このタイミングでやってみよう!って、そういう感じで始まったみたいなんですけど。

(菊地成孔)これはまあ、言っちゃあHIPHOPっていうことだけで考えれば普通のことですよね。友達が友達を紹介して、コラボしているわけなんだから。ただこれが日韓っていうことになると、もうほぼ初めてのことで。それまで、たとえばまあ、あまりこの番組では言及したくないですけども。前史においては反日ラップというものもありましたし。

(ヴィヴィアン)でもこの曲もちょっとした後日談があって。これ、知っている人は知ってると思うんですけど、InstagramでOkasianっていう参加している1人が・・・

(菊地成孔)はい。Okasian、なんかやったんですか?

(ヴィヴィアン)いや、やってないんですけど。Instagramで書いていたのを読んだんですけど。ちょっと確認してないんですけど、このミュージックビデオに、なんか戦犯旗みたいなのが映っているんじゃないか?みたいなのを韓国のファンが指摘して。で、あの日本のラッパーたちの正体を暴け!みたいな感じで、熱くなったファンがごく一部いたんですけど。

(菊地成孔)はいはい。

(ヴィヴィアン)Okasianがそのファンたちに、『僕たちは日本人とか韓国人とか関係なく心を通い合わせた友人だから、こんな下らないことでその信頼関係を崩したくない』みたいなことを言って。で、なんか、『頭ごなしになにかを決めつけてやる前に、1回考えてみてから話し合おうよ』みたいなことを書いていて。すっごい感動したんですよ。

(菊地成孔)ああ、そうね、書いてあったのね。いやー、なんかね、通常、要するにまあいわゆる隣国って呼ばれるものは別に我が国と大韓民国だけではなくてですね、ヨーロッパに行ったって、どこ行ったって隣国っていうのは仲悪いに決まってるの。

(ヴィヴィアン)私、イギリスに住んでいたんで。イギリスとフランスなんかも本当、ひどいですよ。いまだにナポレオンとかの時代のことでケンカしてるんですもん。

(菊地成孔)(笑)。まあ、やっぱり境界線の問題も絶対に出てきますし。で、そんな時にね、まあ絶対そんな人間は愚かなものですから。必ずそうなるし、まあ愚かなもんですから、また仲直りしようってなるし、愚かなもんですから、また仲違いしたりするのを繰り返すんだけど。このね、仲直りの、一緒にやっていこうよって時のターンに、こういうトーンの音楽が充当されたことが歴史上、ないんですよ。

(ヴィヴィアン・韓)うん。

(菊地成孔)だいたいそういう時の音楽っていうのは希望に満ちた明るいものなの。だけどこれがね、日韓親善になっているサウンドなんだっていうことに、ものすごい僕、ショックを受けて。今日、最初にやりましたけど、英語、日本語、韓国語の語学力を総動員して聞くべき曲ですよね。これは。やっぱり。どれかの国。まあ、何語・・・英語、日本語、韓国語、三ヶ国できる人には全部わかるでしょうけど。その人の方が、やっぱりこのヴァースの凄さとかね、伝わると思うんですね。

<書き起こしおわり>

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